Altec Lansing "409-8E"
=Compact Speaker System Takayori Okino Original Version 2016/11/11=
アルテック・「409-8E」 バスレフ式コンパクトスピーカシステム T.Okinoヴァージョン

我が家のバスレフ式自作スピーカシステム第二弾。今度は名門アルテック(Altec Lansing) "409-8E"というモデル名の20センチ同軸2wayスピーカユニットによる、ハイ-ファイな音楽鑑賞用コンパクトスピーカシステム。
409-8Eは、あの劇場用大型PAスピーカ"The Voice of the Theatre Aシリーズ"の専門メーカーとして名高いAltec Lansingが、劇場やそのロビー、スーパーの天井などに埋め込んで主にアナウンスを流すなどの用途のために設計し製造したユニットで、肉声の再生においては抜群の能力を発揮することはもちろん、ヴォーカルものの音楽が得意なプロフェッショナルユースのユニットである。
色彩に富み、雲間から見える、晩秋の澄み切った青い空を仰いでいるときのような、カラッと明るく爽やかな音色である。



開封直後のAltec Lansing "409-8E"ユニット。2015年4月はじめに「ヤフオク!」で落札して入手したもので、開封して手に取ってみてびっくり、汚れがほとんどなく「使ってました」感ほぼゼロという見栄えにまず驚いた。明らかに大変状態が良い品である。ヤフオク!での落札価格は\25,000と高めに感じたものだったが、このコンディションなら安い方だな、と納得した。

入手当初は部屋のスペースを消費したくない理由でしばらくの間は平面バッフルで聴いていた。しかし、平面バッフルはいい面もあるが、平面バッフルであるが故のウィークポイントもありその響きに満足できなくなって、やはりきちんと「箱」にしたほうがよりいっそう安定してもっと素晴らしい響きになるだろうことを期待するようになり、このユニットのためのエンクロージャをきちんと作ってみたくなって、平面バッフルに板を継ぎ足していくことでキャビネット化して、結局はコンパクトなバスレフ式のスピーカシステムに作り替えてしまった...。



このシステムを、平面バッフルをそのままにキャビネット化するにあたり、何を思ったかほとんど遊び心で主にファルカタ材を使ってみることにした。裏バッフルもベニヤ合板と、我ながら恐ろしい木材のセレクトだが、今回それらで組み上げてみたらどんな音になるのか、そのことのほうに大変興味があった。

1.2cm厚のパイン集成材によるバッフル面に、1.3cm厚の幅15cmファルカタ材で枠を作り、それを1cm厚のベニヤ合板で裏を閉じる形で組み立ててみた。
正面から見た大きさは、高さ60cm×幅40cmで ISOPHON "Orchester" SINCE 1960 =Hi-Fi MUSIC MONITOR SYSTEM Takayori Okino Original Version MARK II 2016/10/27= とほぼ同じであるが、あまり場所をとらないようにコンパクトを意識した設計により奥行が19cmで、その容量は設計上おおよそ32.2L程度であり、見た感じもコンパクトで思いのほか大きくは見えない。また質量は、比重が小さめなファルカタ材が主なためか、サイズのイメージより軽い。



ファルカタ材は白っぽい色をしている。そのため、このシステムは少し面白い容姿になった。



裏のベニヤ部分は薄いため低域において板が振動しやすく、それによって音響的な影響〜システムの前と後ろで低音が干渉し合って音に好ましくない着色を生ずる〜と、キャビネット自体のビビリが出てしまうので、これらを抑えるために、上の写真のように2本の角材をボンドとネジで留めて共振抑止を図っている。この処置によって、この部分の箱鳴りはかなり抑えることができている。



内部の様子。吸音材は白がサーモウール、黄色っぽいのがグラスウール。なぜそうなのかは、単にサーモウールによる吸音材が足りなかったからもともと持っていたグラスウールを使っただけ。実際は天井にも底面にも8cm厚ほどの吸音材を貼付けており、音を良く聞いた上でこのようなセッティングにしている。このユニットの場合それだけ抑制が必要なのである。



前面のバッフル板下部に各チャンネルごと内側に、幅2.3cm×高2.5cm、長1.2cmのバスレフポートを作った。
409-8Eは低音の再生が苦手と言われるがそれは確かである。密閉で鳴らすとキャビネットの容量が小さいこともあってかロック系の音楽の場合はドラムセットのバスドラがディテールが不明瞭で物足りない。

このシステムには、はじめに大きめにポートを作ってしばらく聴いていたが、この409-8Eらしい、スレンダーでそれなり懐が広く心地よい低音になるよう、実践使用でいろいろと試した末に、写真のようにゴム片でポート自体の断面積を半分程度に絞ることで、ポートの共鳴周波数をおおよそ42Hz程度と低めにとり、これによって超低域から中低域までのつながりが滑らかになっている。わたし的には、これが最良のセッティングだと思っている。



良好な音質のためと、移動の便利さを図るため、ゴム車輪のキャスターを装備。



"LIMP"によるインピーダンス測定結果。グラフがトータル的にほぼぴったりの特性を示していることから、今回もキャビネットは左右ともほとんど揃った仕上がりになったようで、非常に嬉しい。密閉性についてもほぼ問題は示されていないように見てとれるし、自作スピーカ部門では好ましくない響きとしてしばしば話題になる、箱の内部の「定在波」もほとんど存在していない模様。

特筆すべきは、このユニットのコンディションについてで、「大変状態が良い」と先述したが、それはこのユニットが到着した直後に開封した際にあまりに奇麗で使用感がほとんどなかったからそのように思った、という直感的なことだけではなく、グラフが左右両方ともほとんど美しく揃っていることから、いわゆる中古品であるにもかかわらず極めて良好なコンディションであることを数字的に裏付ける結果になったと思う。このテの製品は何分古く特に入手前にどんな使用条件だったかや、どのような保管状況だったかによってそのコンディションは個体ごとにばらつきがあるのが普通なので、インピーダンスを測定するまではそのことは少々覚悟していたが、そういうことはほとんどなかったことが分かって、胸を撫で下ろしたとともにとても嬉しいことである。

ユニット自体のインピーダンスは公称8Ωだが実測では左右平均で7.3Ωだった。ただ、409-8Eは天井埋め込み型のアナウンス用としての用途を想定した設計で中・高域の張り出しが特徴とされているが、グラフを見ても分かるようにツイータのインピーダンスが、10kHz帯域で公称インピーダンスを下回っていることに注目、ここの数字は見てないから実際は何Ωかは不明だけれど、その分ツイータが頑張って、中・高域がそれだけ大きな音量で再生されている、これがいわゆるアルテック・トーンとも呼ばれる、409-8Eの特徴の所以であることが分かった。

低音についても、409-8Eがコルゲーションエッジであるから低音が出にくい特性になっているというだけではないことも、このグラフから読み取れることと思う。
さらにバスレフポートもこのインピーダンス曲線から読み取ることができ、ポートの共鳴周波数(42.6Hz)と実測公称のそれ(358.9Hz)の抵抗値がほぼ近似した数字になっていることから、この新しいキャビネットでもバスレフがきちんと動作してくれていることを確認できた。バスレフポートの大きさは、これくらいで十分なのである。


さてさて、このシステム、パイン集成材のバッフル版、ファルカタ材の枠、・ベニヤ合板の裏バッフルという、ちょっとおかしな組合わせで作成して完成したにしては思いのほか素敵な響きになった。クセとしては150Hz帯域でのボンつきがわずかにあるが、それ以外は別段ほとんどクセはなく、独特の明るく爽快な音を響かせてくれている。
印象的に、これは立派にハイ-ファイかつコンパクトサイズのオーディオスピーカシステムとしての価値は十分にあると感じる、そういう響きである。




「アルテックトーン」と言われているようにカラっとした明るい響きであるのは確かで、曇り空、突然開いた雲の隙間から真っ青な空を仰ぐようなスカッとしたようなイメージで、
↓↓↓↓↓↓↓↓こんな感じ↓↓↓↓↓↓↓↓

すっきり爽やかではつらつとしている。そして前に飛んでくるようなやや硬質な響きは実に爽快であり、若干青みがかった音色という印象で、人の声の再生はもちろん抜群であるが、あらゆる楽器の音が艶っぽくて美しく聞こえ、音の幅広い色の再現が要求されるオーケストラサウンドも極めて美的で、気持ちよく音楽を楽しんで聞くことができる。

一方、低音については、今回作ったキャビネットのように32L程度の少々狭めな容量とは相性がいいようで、バスレフポートのチューニングもぴたりと決まったのか抑制が利いてわたしの耳には案外それなりに芯のある締まった低音が出ているように感じる。この締まった細身の低音が、この409-8Eの爽快ないわゆるアルテック・トーンをいっそう引き立てているようで、わたし的にはほとんどのジャンルの音楽をカバーできると思う(というより何でも聞いてる)。声楽曲などヴォーカルものや室内楽などの小編成スタイルの音楽の再現がお得意分野かもしれない。

何しろ憧れの本場Altec Lansingの409-8Eで、本来オーディオ用ではないにしても名機と言われている優秀なユニットである。
このユニットについては、実ははじめにElectro-Voiceのものを入手していたが、その後しばらくしてこのユニットのことをネットで調べているうちに、"409-8E"はもともとはAltec Lansing社が製造しており、それが後に同社がElectro-Voice社に買収された後も引き継がれて製造が続けられていたものであったことを知った。
わたしの恩師がその邸宅に、やはりAltec Lansing社のフラッグシップモデルの"Voice of the Theatre A5"をお持ちであり、別にそんな恩師と張り合うわけではないのだけれど、そのAltec Lansingの"409-8E"が急に欲しくなってヤフオク!で探していたところ、大変コンディションの良いものを落札、さほど時間をかけずして入手できた。これはご縁だと思っている。これでわたしもアルテックユーザーと愉悦している。

毎日、この409-8Eという名機による素敵なアルテック・トーンを楽しむことができて幸せである。


※このスピーカユニットは、元々使用条件がオーディオ向けでなく低域の再生は苦手なほうなので、許容入力は大きいですが、スピーカの保護のことを考えて、大きな音を出させる場合は低域のレベルに注意する必要がある。


本ページ作成者:沖野孝頼