ISOPHON "Orchester" SINCE 1960
=Hi-Fi MUSIC MONITOR SYSTEM Takayori Okino Original Version MARK II 2016/10/27=
イソフォン・「オーケストラ」 バスレフ式ハイ-ファイ・ミュージックモニタシステム マークII T.Okinoヴァージョン


我が家のバスレフ式自作スピーカシステム第一弾。2016年10月27日に、以前のキャビネットよりコンパクトながら大きく進化した(後述)本格的なミュージックモニタを作った。人生で初めての「自作スピーカ」である

スピーカユニットは、なんとISOPHON "Orchester"イソフォン・「オーケストラ」、ドイツ生まれの大変古いヴィンテージ・スピーカユニットで、かつてテレフンケンやテルデックのスタジオモニタとして多用されていた経歴を持つ、いわゆるプロフェッショナルユースの超・高級品である。
BOSE群(101MM,301AVM,301V)と比べるとわずかに暗いトーンであるが、その解像度は非常に明瞭である。色に例えるならば「無色透明」で、極めて純真無垢で格調高い音色であるのが大きな特徴である。

直径30センチの同軸2ウェイ型、憧れの名機で2014年の秋に恩師から譲り受けた、わたしにとってとても大切な"財"である。







木材はすべて18mm厚のパイン集成材(赤松)である。パイン集成材はホームセンターで手軽に入手できる上、この木材はまずこちらのページの解説によると、その比重はだいたい0.4〜0.6くらいと中程度で、「低音、中音、高音がバランスよく響く(引用)」性質なのだそう、次に例えばかつての劇場用大型スピーカ"Altec Lansing The Voice of the Theatre A5 system"がベイマツによるキャビネットであったということだから、こういったことから、ベイマツと比重がほぼ近似していると思われるパイン集成材は若干「硬め」傾向の響きにはなろうが、フルオリジナルなスピーカキャビネットの材料としてはまさに最適だろうと考えた。

自然素材なので当たり前の話だけれど、パイン集成材に限らず木材の板は一枚一枚微妙に比重が違っていたりするから、軽く叩いた時の「響き」だって異なる、すなわち「質」も違うのである。
したがって手当り次第に板を買って安易にスピーカキャビネットを作ろうものなら、左右で微妙に響きが揃わないものになってしまう危険があるから、可能な限り性質をそろえるため、実際に板の選定にあたってはホームセンターの木材売り場でパーツを切り出すための材料となる板を1枚ずつ出して、軽く「コンコン」と叩いて「音の質感」を確かめながら、「これにする!!」と決めて入手した。
素敵なユニットのために奮発して高スペックなキャビネットを作ろうというのだから、これは譲れない重要なポイントである。叩いてみて、しっかりと芯があっていい音で鳴ってくれる板を、気が済むまで相当慎重に選んだので、すべて決まるまでに1時間程度を要し、お店の人や他のお客からは「怪しい人」に見られてたかも....。でも、これについては「正解」だったようで、お陰さまで大満足なキャビネットに仕上げることができた。



大きなパイン集成材からバッフル板、裏バッフル板、側板、天板、底板などを切り出すのはもちろん、ユニットの穴、バスレフポートの穴などは素人のわたしでは奇麗に空けられないので、お店のカットサービスでやってもらった。

板が揃ったら、それらを木工ボンドや木ねじで組み上げてキャビネットを作っていく。こうサラッと書いた通り、根気があり慎重にやればどなたでもできる簡単な作業。
ところが、途中、わたしの非常におバカな設計ミスで切り出しが失敗した板があることが発覚し=つまり側板の幅が天板・底板の幅よりはみ出してしまうため箱にすることができない=、それら切り出しに失敗した板をノコギリで縦に切って「修正」したり、それに起因する重大な問題として、裏バッフルを閉じる際にキャビネット内の密閉がうまくいかない=つまり隙間ができてしまう=アクシデントが発生して、そのことに激しく落胆しながらも、せっかく奮発して高いお金をかけて板を準備したのだから、絶対あとには引けない気持ちと、何としても素晴らしい響きのキャビネットを作り遂げるという強固な意志を保ちつつ諦めないで、その問題を解決するのにどんな方法があるか長時間思案し、それに基づいて様々に試行錯誤するなどで大変苦労したが、最終的には10mm厚のゴムスポンジ製の扉と壁の隙間を塞ぐためのテープ(高かった!!)をキャビネット裏の間口の枠に貼付けて、裏バッフルを閉じた時の隙間を埋めるようにすることで密閉性の問題を確実に解決した。そうして徐々に箱が組み上がっていく度に「これはとてもいい響きの大変素晴らしいキャビネットができるぞ〜♪」と、いつも何だかワクワクと心躍る思いがした、それが何とも心地よかったし、そして、楽しかった。

できあがったキャビネットの大きさは、高さ63.6cm×幅40cm・奥行31.8cmで、その容量は設計上おおよそ61.6L程度になった。





このスピーカシステムは重いので、キャスターをつけて移動の利便性を図っている。また、前と後ろであえて径を異ならせることでシステム全体を若干上向きにさせて、高域を部屋の隅々までしっかり届けられるようにしている。




キャスターは主にゴム製車輪とナイロン製車輪がある。やはりそれぞれで音質はかなり違う。いろいろ試してみたところでは、ゴム製車輪のほうが音に妙な色がつきにくく、クセのないクリアな響きになるように思う。


バスレフポートは、厚さ4mm-内径4cmの塩ビパイプを選定して長さを8.5cmくらいにカットして作った。自作スピーカ部門では、バスレフポートには一般に塩ビパイプがよく使われるようであるが、バスレフポートはその構造と原理上、低音の再生中はそれなりの負荷がかかり、手で握ると少しでもたわんでしまうほど強度の低いものだと良質な低音の再生はできないことになる。
よって、強度の高そうな塩ビパイプはないだろうかと探してみると実際に厚さ4mmの塩ビパイプが見つかり、それは手で相当大きな力で握ってもほとんど「ヘニョっ」とたわんだりへこんだりしないから、これだけ堅いのだったら良質な低音を再生できることを期待して、今回はこの塩ビパイプでポートを作った。加工難しいかなとトライしてみたら、案外そうでもなかった(^_^;)...。



ポートの位置については、例えばBOSE 301Vはバスレフポートが背面にあるので、それにならってこのシステムでも背面にポートを作った。共鳴周波数は左右平均で21.7Hz(設計上:24Hz、インピーダンス実測より)になっている。これにより、密閉式のようなバランスのとれた自然な低音の響きと、少し大きめの音量でしばらくの間聞いていると軽い頭痛や吐き気をもよおしてきそうなほど人体にとって影響力の強い20Hzという超低音まで幅広く悠々と再生する。




"LIMP"によるインピーダンス測定結果。今回新たに作ったキャビネットは、グラフがトータル的にほとんどぴったりの特性を示していることから、左右ともほとんど揃った仕上がりになったようで、非常に嬉しい。密閉性についてもほぼ問題は示されていないように見てとれるし、自作スピーカ部門では好ましくない響きとしてしばしば話題になる、箱の内部の「定在波」もほとんど存在していない模様。ユニット自体のインピーダンスは公称4Ωということだが、実測では左右平均で2.4Ωだった。インピーダンスが低いからといって何も心配はいらず、この曲線を見ても分かるように、パワーアンプから伝えられる限られた出力からなるべく大きな音量を取り出す観点から言えば、低域を主にそれだけ「能率が高い」ということである。バスレフポートについてもこのインピーダンス曲線から読み取ることができ、ポートの共鳴周波数(21.7Hz)と実測公称のそれ(193Hz)の抵抗値がほぼ近似した数字になっていることから、この新しいキャビネットでもバスレフがきちんと動作してくれていることを確認できた(そのように設計して作ったのだから至極当然のことなのだけれど)。





音については、BOSE群と比べると、少し暗いトーンだけれど柔らかく耳あたりがとても良い音です。「音」の鮮やかさや艶っぽさはBOSE群を上回っており、まるで深い海の底がくっきりと見えるように音の濁りは一切なく、極めて透明度が高くピュアで、非常に紳士的で美しい音です。直径30センチの大きなコーンながら、上質で懐の広い低音の響きはもちろん、小型スピーカシステムのようなスレンダーで繊細な「響き」も持ち合わせていて、音の幅広い再生能力を有し、ISOPHON "Orchester" SINCE 1960の貫禄であると感じています。
様々な「音」の再生を身軽にこなし、"Orchester"と名付けられているだけのことはあって、幅広い表現の再現性が求められるクラシック音楽全般が得意なのはもちろん、ジャズ、ポップス、ロック、電車の音、自然界の癒しの音、エンジンサウンド....などなど、その独自の鳴りっぷりで、何をかけてもけろっとさらっと、まるでそれが当然であるかのように、録音されたソースの音が素直に出てくる。早く言えば「何でも聴ける」。
何をかけても極めて心地よく響くので、どんな音楽でも、このスピーカで聴きたくなるほどです。
我が家が所有するスピーカの中で、もっとも貫禄があって紳士的で格調高い響きです。
「良いスピーカは人生を何倍も楽しくしてくれる」と恩師は言っておられるが、実にまさしくその通りだと、このスピーカユニットの音を聴いて実感しました。
さすが、ドイツ生まれの、プロフェッショナルユースでヴィンテージのスピーカユニット、ISOPHON "Orchester" SINCE 1960。大切に使っていきたいです。


許容入力が10Wしかないので大きな音を出させる場合は低域のレベルに十分注意する必要がある。


本ページ作成者:沖野孝頼




<ここまでの変遷>


わが敬愛する恩師からこのISOPHON "Orchester SINCE 1960"というユニットを譲り受けた当初は、とりあえず鳴らしてみたいということで厚さ1.8cmのパイン集成材を高さ60cm×幅50cmというサイズにカットしてバッフル板を用意し、これにユニットを取り付けて↓

いわゆる「平面バッフル」方式でしばらく聞いていたが、その後、低音の再生能力の向上を目的とした音質のグレードアップを狙ってこの平面バッフルの周囲を覆うように板を継ぎ足して「セミ・ダイポール式」のシステムに構造変更し↓

さらにその後に、さらなる低音の再生能力の向上を狙って、低音の響き具合を確かめながら、このシステムの背面を小さな板で少しずつ塞いでいく↓

などの過程を経て結局はキャビネットを作ってしまい、最終的に2015年12月25日に、我が家で最高峰のスピーカシステムに位置づけられる「バスレフ式の大型ミュージックモニタ」として完成した。







2016年10月下旬まで、これで聞いていた。このキャビネットはなかなか具合がよく、少しファットな響きだったが、わたし自身はさほど不満を感じてはいなかった。
でも、もともとは平面バッフルから始まり、キャビネットとしてきちんと設計して作ったわけではないから、これはいわゆるプロトタイプ的な意味合いが強く、改めてきちんと設計して新たにキャビネットを作ったら、もっと素晴らしい響きのキャビネットができるかもしれないと突然思いつき、奮発して新たに作り直したのが、当ページの始めからご紹介している新モデルのシステムである。
ユニットを譲り受けてから2年を経てようやく完成した現行の新しいキャビネットは、前モデルで少しウィークポイントだった、中低音域でファットになりがちな響きとあまり締まりのない最低音が大きく改善され、"Orchester"というユニットの持つポテンシャルをいっそう引き出して、魅力あふれるサウンドにすることに成功している。